「どっちのマッサージ」
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2012年バックナンバー
整体指圧師修行中の20代の話。遊びたい盛りの私達は、給料日になると給料袋をポケットに入れ、同僚7~8人と夜の小田原の街へ繰り出すのだった。「俺今日金持ってるんだよねー。」給料日なんだからみんな持ってるよ。でもそこは、可愛い後輩たちから「ごっさんでーす。」の言葉に乗せられ、払わされることになる。
居酒屋で満腹になり、酔いも回っていい気分になると、誰かが「オケカラ行っちゃいますぅ?」二軒目は、決まってカラオケだった。今のようにカラオケボックスではなく、スナックだ。男臭いマッサージ軍団がゾロゾロと入ればすぐに一杯になってしまうようないつもの小さな店。ダミ声のママがカウンター越しに「ビールの人?」「うーぃ」「俺ウーロンハイ」全員揃うと「ちーす!」と再び乾杯し、宴が始まる。ママが「じゃあ、適当にやって。」とウタ本をめくるやいなやハイテンション。一曲目から最高潮に(真冬なのにみんなTシャツかタンクトップで椅子に立ち上がって歌っていた)。
そんな中、隣の常連らしき水商売風のお客さんから「元気ねぇ。何のお仕事?」と聞かれる。「みんなマッサージ師です。」「そうなんだぁ。わたしは、あっちのマッサージは、知ってるけど、こっちのマッサージの?」巷にクイックマッサージはまだなく、マッサージといえば温泉でやるか、“あっち”のマッサージのどっちかしかない時代。飲み屋での酔っ払いジョークの定番です。資格を持ち、真面目にマッサージ業に励んでいるこちらとしては、プライドに火が着く訳です。「最近、肩が上がらなくなってきたんだけど、これって四十肩?」するとカウンターからダミ声で「さば読むんじゃないわよ。四十じゃなくて、六十肩でしょ。違うかー。ガハハハッ。」「・・・。」笑えません。「これって治るの?」「治りますとも。」「じゃあ、ここに寝て下さい。」とソファーに寝かせ、治療が始まってしまうのです。仲間が大声で熱唱している中、飲んだ酒が全部汗で流れるのをおしぼりで拭き拭き、真剣にやります。「あっ本当だ!上がるよ。凄い!」「次わたし予約!」と次々やるはめに。こうやって夜の盛り場で腕を磨いたものです(威張ることじゃないか?)。最後に「ママっ、この人たちの分全部ツケといてー。」という言葉に一同「ごっさんで~す!」と夜は更けていくのでした。
居酒屋で満腹になり、酔いも回っていい気分になると、誰かが「オケカラ行っちゃいますぅ?」二軒目は、決まってカラオケだった。今のようにカラオケボックスではなく、スナックだ。男臭いマッサージ軍団がゾロゾロと入ればすぐに一杯になってしまうようないつもの小さな店。ダミ声のママがカウンター越しに「ビールの人?」「うーぃ」「俺ウーロンハイ」全員揃うと「ちーす!」と再び乾杯し、宴が始まる。ママが「じゃあ、適当にやって。」とウタ本をめくるやいなやハイテンション。一曲目から最高潮に(真冬なのにみんなTシャツかタンクトップで椅子に立ち上がって歌っていた)。
そんな中、隣の常連らしき水商売風のお客さんから「元気ねぇ。何のお仕事?」と聞かれる。「みんなマッサージ師です。」「そうなんだぁ。わたしは、あっちのマッサージは、知ってるけど、こっちのマッサージの?」巷にクイックマッサージはまだなく、マッサージといえば温泉でやるか、“あっち”のマッサージのどっちかしかない時代。飲み屋での酔っ払いジョークの定番です。資格を持ち、真面目にマッサージ業に励んでいるこちらとしては、プライドに火が着く訳です。「最近、肩が上がらなくなってきたんだけど、これって四十肩?」するとカウンターからダミ声で「さば読むんじゃないわよ。四十じゃなくて、六十肩でしょ。違うかー。ガハハハッ。」「・・・。」笑えません。「これって治るの?」「治りますとも。」「じゃあ、ここに寝て下さい。」とソファーに寝かせ、治療が始まってしまうのです。仲間が大声で熱唱している中、飲んだ酒が全部汗で流れるのをおしぼりで拭き拭き、真剣にやります。「あっ本当だ!上がるよ。凄い!」「次わたし予約!」と次々やるはめに。こうやって夜の盛り場で腕を磨いたものです(威張ることじゃないか?)。最後に「ママっ、この人たちの分全部ツケといてー。」という言葉に一同「ごっさんで~す!」と夜は更けていくのでした。